「No Meets」
はじめました。

会えない時間のWEBマガジン No Meets 文:松尾修平

こんにちは、月刊誌『Meets Regional』編集長の松尾修平です。
はじめましてのみなさんに、まずはご挨拶です。

『Meets Regional(以下、ミーツ)』は、1989年に創刊した、京阪神の街と人にフォーカスした月刊誌です。
「街を知る人のための雑誌」「街に一番近い雑誌」というスタンスで、創刊以来、編集部員が足を使って「街の匂いが伝わるとことん密着したディープな紙面づくり」という編集方針を貫いてきました。

それゆえ、公私問わず日々街へ出て、街の人たちと会話して、そこで聞いた口コミを追いかけて企画を考える……という、まさに活きた情報こそが誌面作りの生命線。
関西の街で暮らす日々が、より楽しくゴキゲンになるためのヒントを紹介してきました。

ところが、4月。新型コロナウイルスの感染拡大がいよいよ危険水域。ちょうど進行していた京都特集の取材・編集作業中の編集部員から、街のナーバスすぎる状況が届くようになり……日々状況が変化。そして、緊急事態宣言発令。

取材やロケハンなどの実作業から書店での販売まで、あらゆることが継続困難となり、6月1日に発売予定だった特集号が、やむなく休刊となりました。おそらく、創刊31年目にして初めてのことです。

たとえどんな時でも、ミーツでは、毎日の暮らしがちょっとだけ楽しくなるようなことを伝えたい!と思っていたのに、雑誌としてできることを見失いかけて……いや、見失ってしまいました。

6・7月合併号として5月1日に発売した京都特集。急遽、取材店にテイクアウト情報を追加しました。

自粛生活は
案外楽しくもあった。
でも、ポッカリ
穴が空いた。

緊急事態宣言による外出禁止により、みなさん同様、僕自身のライフスタイルも大きく様変わりしました。

まず、以前は週5〜6で街へ飲みに繰り出していた時間を自宅で過ごすようになり、家のことや自分自身のことに目を向けたり、考えたりする時間が増えました。

そんな日々は案外楽しくもあったのですが、生活が整っていくと、必要以上にルーティンにこだわり出して、なんだか常に追いかけられているような自分自身に気づいて……。何かが違う。何かが足りない。

その答えは、自粛生活中に初体験したオンライン飲み会にありました。

たった数週間会わなかった友人から、東京に住む数年ぶりの知人までが顔を合わせて、酒場よろしくのバカ話に大笑いしたり、withコロナやafterコロナについて真面目に語り合ったり、話す内容はとにかく雑多。だけど、そんな雑談が、めちゃくちゃ楽しかったのです。気づけば数時間も話し込み、普段家では絶対に飲まない量のビール缶が空いていました。

自粛中の日々に足りなかったのは、一見ムダとも言える、そんな「雑」な時間だったのです。

雑誌=雑多なモノやコトが集まった誌面

今こそ、雑誌のような“雑多なモノやコト”が、生活に潤いを与えられるんじゃないだろうか。そんなことを考え始めていた時、ライターのロマンくんから連絡がありました。

「人間編集部と一緒に、ミーツを作りませんか?」

会えない時間の
マガジン『No Meets』。
それは、
手法も早さも5G。

ミーティングから企画会議、撮影までほぼ全てオンライン。

5月1日。Webに特化した記事制作を手掛ける人間編集部のメンバーであり、ミーツでもライターとして活動しているロマン君を通じて、株式会社人間の代表・花岡さんとオンラインでのミーティングを行うことになりました。

「休刊になったミーツ6月1日発売号を、人間編集部と一緒にWebで作りませんか?」

いつものミーツが出ないことを逆手にとって、今だからこそできる手法で、ミーツのB面のようなWebマガジンを作ってみてはどうか? との提案だったのです。

実際、コロナ禍における世間の状況の変化の早さに、紙媒体の速度ではとても追いつかないと打ちのめされていたところだったので、Webを専門とする人間編集部からの提案は、「動きなはれ」と背中を押してくれるような気持ちになりました。

約1週間で話は進み、5月7日、MeetsRegional編集室と人間編集部から有志のメンバーが集まり、期間限定のWebマガジン『No Meets』がいよいよ動き出したのです。

コンセプトは「会えない時間のWebマガジン」。
会えなくても作れる、会えないからこそ作れるコンテンツをWebで発信。
雑談、雑誌、雑学、雑食……テーマは「雑」。
6月1日発売号の休刊に合わせて、6月1日公開、6月30日更新終了(予定)。

『No Meets』では、十八番のロケハンも、顔を合わせた取材もしていません。というか、できません。だから、作り方も内容も、いつもとは違うミーツを目指しました。だから、特集テーマの「雑」にまつわる企画はいたって不真面目(失礼!)。タイトルの「ノー・ミーツ」よろしく、とにかく会わずに作ろうというところは、非常にこだわって作りました。

なにせ、この話が持ち上がってから、今日こうしてローンチするまで、人間編集部のみなさんをはじめ、ライター、カメラマン、デザイナーなどなど、このプロジェクトに携わって下さった誰もが、パソコン上でしか顔を合わせていない=実際に会わずに制作しているのです。

例えば、この対談企画「会えないあの人と雑談」では、スカイプやLINE、Zoomなどを使ってオンラインでのインタビューを敢行。それをカメラマンが自宅のマイ・パソコンに投影、対談の模様を撮影しているのです。

他にも、大阪カレー版グータンヌーボな雑談連載に、日常のモニャモニャを漫画にした連載、再会を願って書かれた短歌、音声で語る雑音企画、そして関西各雑誌編集部による特別寄稿などなど。「雑」をテーマに、雑然紛然な内容を期間限定でお届けします。

このWebマガジンが、コロナ禍で落ち込んでいる関西の店々のスタッフさんやミーツの読者のみなさんをはじめ、今回『No Meets』をきっかけにミーツを初めて知ったというみなさん、そして制作にご協力頂いたスタッフや関係者のみなさんの毎日を、ほんの一瞬でもゴキゲンにできることを祈ってます。そして何より僕自身、このプロジェクトに携わっていることによって、励まされている部分が大いにあります。

手法も早さも、そして内容も5G(=ゴキゲン)。
ノー・ミーツ、だけど濃密。

今だからこそ、今しかできないコンテンツをお届けします。

文:松尾修平
編集:トミモトリエ

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