2022.02.04 Fri

仁平綾の京都暮らし、「へぇ、そーなんだ!」vol.0 プロローグ

ニューヨークから縁もゆかりもない京都に引っ越した“よそさん”ライターが見つける、京都の発見あれこれ。

エッセイスト。夫の仕事の移転を機に東京からN.Y.へと移住し、N.Y.にまつわる著書を数々出版。
9年の滞在を経て、2021年にあこがれの京都へ。
近著に『ニューヨークおいしいものだけ』(筑摩書房)、『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)
IG:@nipeko55



「オットと猫1匹と、京都暮らし始めました。」
 

↑9年間通ったブルックリンのイーストリバー。

「どっから来はったん?」
四条大橋の上で、夫と二人、鴨川の澄んだ水を無心に覗き込んでいたとき、横にいた白髪のご婦人に話しかけられた。
「ニューヨークです」。
そう答えようと思ったけれど、いや待て、コロナのこともあるし「東京です」と、とっさに答える。
聞けば、ご婦人は京都在住で、ほぼ毎日、散歩のため街まで来ているという。
「水が透明で。京都ってすばらしい場所ですねっ」
と鼻息荒く伝える私に、ご婦人は、ふふっと笑った。

 

↑大きな空にマジカルな夕景色。鴨川が好きだー!

川の流れる街が好きだ。ぽっかり、川のところだけ贅沢な余白みたいだから。
そんな川をぼーっと眺めていると、心の澱みがするっと流れる(気がする)。
私が9年間住んでいたニューヨークのブルックリンには、西端に愛すべきイーストリバーがあった。
しかし、えらい汚さで、ありとあらゆる菌がうじゃうじゃ、泳いだりしたら病気になるぞ、と地元民に脅されたこともあるぐらいだ。
だから鴨川の、川底が見えるほど透き通った水は、派手に二度見したぐらい衝撃だった。

 

↑ N.Y.からの荷物は全部で50箱。

京都に引っ越してきて、もう5カ月経つけれど、鴨川に出くわすたび、その透明な美しさにときめいて、足を止めてしまう。
橋の欄干にぎゅうっと上半身を押し付け、足もとの川に熱視線を向けている中年女がいたら、それはたぶん私です。

↑ブルックリンの住まいは元ニット工場。天井高は4メートル。

「京都のバス、緑の線が入ってるやろ。あれ、鴨川の流れを表してるねんて」
先ほどのご婦人が、目の前を通りすぎるバスを指差し、言う。
「へえぇぇ、そうなんですねー」
私と夫が声をそろえる。
京都の市バスは、薄緑色のボディに、ダークグリーンのラインが流れるように施されている。
鴨川への敬意を込めたデザイン。京都って、すてきだ。
ご婦人と別れ、自宅に戻り、早速Googleで調べてみたけれど、そんな情報は一つもヒットしなかった。
まあいい。きっとそうに違いない。私はご婦人を信じている。

 

↑愛猫のミチコ。入国手続きが大変すぎて泣いた。

というわけで、みなさま、はじめまして。
2021年春、オットと猫と共に、ニューヨークのブルックリンから京都に移住した、仁平 綾です。
これから私が京都で出会った「へえ、そうなんだ」という発見を、毎月エッセイと写真でお届けします。
出身は千葉県。東京を拠点にしたあと、ニューヨーク暮らし。
縁もゆかりもない京都は、ただあこがれの街。という完全なよそものです。
だから、京都の人が「え、そんなことも知らないの?」と驚かれることを、たびたび繰り出すかもしれません。
どうかお手やわらかに、これからよろしくお願いします。
 

※掲載しているすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます

  • SAVVY online
  • 仁平綾の京都暮らし、「へぇ、そーなんだ!」vol.0 プロローグ