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概要

otona_osaka

44見て学ぶ、鳥瞰図絵師の仕事。 市街をまるごと描き、かつ細部をどこまで克明に再現できるか。『大阪市パノラマ地図』は、この難問にみごとに応えた。道、川、橋、区画など街の骨格が正確に描きこまれ、肉づけとして主要な建物・施設を当時の姿のままに視覚化している。全体を見てスケールに圧倒され、細部をのぞいて精密さにあきれる。いつまで眺めていても飽きない。時代のビジュアル記録としても貴重。戦前に描かれた大阪鳥瞰図で文句なしの最高峰だ。細密描写に徹底するほど、労力も完成に要する時間も数倍にふくれあがる鳥瞰図で、ここまで完成度を追求した制作者の心意気に敬意を表したい。 これは日本列島めがけて滑空する渡り鳥の目に飛びこむ風景か? 瀬戸内の海岸線から淡路島、大阪湾、突き当たりに出現した大阪の街を、まるで箱庭みたいに見下ろせる。さらに目を近づければ、そびえたつ大阪城の足もとに大阪駅やビルの群れ、屋根瓦の波、線路を走る電車、港や川にうかぶ船がひしめき、周囲には琵琶正確無比にして華麗。これぞ大阪鳥瞰図の金字塔。大阪の向こうに富士山。イッツ・パノラマ・マジック。よしだ・はつさぶろう1884年生まれ。友禅の図案工、洋画の修業を経て、皇太子に作品がほめられ鳥瞰図絵師に。全国の都市や名所を独特のパノラマ技法で描き、「大正の広重」の異名を得た。生涯に千数百点の作品を残す。みのべ・せいじろう大正期に活躍した線刻銅板画の作家。多くの門人を抱え、当時は著名だったようだが詳細は不明。細密描写を得意とする線刻銅板画で培った技術が、大阪市パノラマ地図にも存分に生かされている。吉田初三郎『大阪府鳥瞰図』(1932年・大阪市立中央図書館蔵)美濃部政治郎『大阪市パノラマ地図』(1924年・大阪市立住まいのミュージアム大阪くらしの今昔館蔵)湖、京都、神戸の街々。遠景にはなんと青森、東京、富士山が小さく見える。これぞパノラマ・マジック。『大阪府鳥瞰図』は天皇の大阪行幸の展覧品として描かれた。大正から昭和にかけて絶大な人気を誇った鳥瞰図絵師・吉田初三郎が全力を傾けた代表作だ。原図は今、公文書総合センター(大阪府庁内)で公開されている。