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概要

chizu_kyoto

「たださえ京は淋しい所である。原に真葛、川に加茂、山に比叡と愛宕と鞍馬、ことごとく昔のままの原と川と山である。昔のままの原と川と山の間にある、一条、二条、三条をつくして、九条に至っても十条に至っても、皆昔のままである。数えて百条に至り、生きて千年に至るとも京は依然として淋しかろう。この淋しい京を、春寒の宵に、とく走る汽車から会釈なく振り落された余は、淋しいながら、寒いながら通らねばならぬ」98 大学2年の夏、漱石は親友の正岡子規と初めて京都を訪れ2泊している。夜遅くに京都に到着した漱石は、その足で円山公園や清水寺を少し回った。二日目は?山ばな平八茶屋?で川魚料理を食べ、比叡山に登る。 それから15年程が経ち、すでに40歳になっていた漱石は、朝日新聞社へ入社する直前の3月末から4月にかけ、友人ふたりの待つ京都を訪れている。思った以上に寒かった京都は、初日から漱石をうんざりさせた。「ただでさえ京は淋しい所である(中略)日本にこんな寒い所があるとは思わなかった」(『京に着ける夕』)。東京生まれの漱石はどうやら京都に対し、あまりいいイメージはもっていなかったようだ。それでも滞在中は約2週間で約二週間で50カ所以上のハイペース、作家漱石の礎となった旅を追体験。17年に生誕150年を迎える夏目漱石。京都へは学生時代の旅行をきっかけに4度訪れ、2度目は市内各所から宇治まで隈なく回っている。そんな漱石の旅の足跡を行程と共に辿ってみよう。取材・文/古都真由美 撮影/エレファント・タカ京都ジャーニー