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概要

kansai_kenchikuka

50住まいの空間を覆う素材の力倉方 見た目の立派さだけで終わらない「いい住まい」には、いい空間があります。しかし、「空間」と一口に言ってしまうと、少しわかりづらいかもしれません。そこで、「素材」「内と外」「使い勝手」という3つのキーワードから、いい空間とは何かを紐解いていきたいと思います。まず、素材に関しては、今、私たちがいる竹原さんの事務所、この部屋だけでも実にいろんな素材が目に入りますね。竹原 木だけでも恐ろしい種類を使ってます。天井は2種類の漆喰を塗って。素材というのは、時代とともに移り変わっていますけど、もともとは土を練ったり、紙を漉いたり、木を切ったりして使っていました。ところが、もっと簡単に手に入る物をということで、もとの素材を写した工業製品が取って代わって、それが住まいの空間を覆っています。その結果として、本物の素材を知らずに育っていく人がいる。どうしてもこの弊害というのはあると思いますね。吉村 本物がわからなくなっていますね。ただ、私が学生の頃とは生活や暮らし方がまったく変化していますから。少しテーマからはずれるかもしれませんが、NHKの朝の連ドラを見てるとね、ちゃぶ台のまわりに家族が集まって食事をする場面が頻繁に出てくるんですよ。竹原 要するに、家族の幸せを象徴させるにはそのシーンしかないわけでしょう。小津安二郎の映画なんかでもそうだったじゃない。吉村 小津の時代はともかく、昔とは全然違った生活習慣になった現代でも、食卓を囲む場面にこだわるところに、作者(脚本家)の意図があるんじゃない?倉方 食卓を囲むようなシーンには、時代が変わっても変化しない本物の感じがあります。ドラマでも住まいでも、そんな素材が作られた物に安定感を与えますね。ここで言う「本物」ってどういうものでしょう。吉村 30年ほど前の何か雑誌の対談で、アレックス・カーと白洲正子が「本物」とは何かについて語り合っているのを読んだ覚えがあるのですが、そのとき本物について関西に拠点を構えながら、これまで数多くの住宅を設計して、今なお第一線で活躍する3人の建築家。今、住まいの空間をどう考えているのか。そこで建築家の果たす役割とは…。建築史家の倉方俊輔さんによる進行のもと、それぞれが考える住まいのカタチを聞き出しました。構成・文/竹内 厚 写真/バンリ出席:竹原義二 木原千利 吉村篤一司会:倉方俊輔会場:無有建築工房住宅建築家BIG3対談いい住まいって何ですか?