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概要

osaka_bon_2015

13 街を歩けば「おぉ智ちゃん!」と店の主人と手を振り合い(中村智太郎さん時代のニックネームである)、またそぞろ歩くと「ママに顔見せな」とバーに立ち寄る。明治から昭和初期にかけて活躍した初代は「がんじろはん」の愛称で親しまれたが、そんな上方歌舞伎の大名跡を2015年に襲名したご当人も、やはり〝大阪の顔?であられたか。 二十代から街との蜜月を過ごす鴈治郎さんとめぐるのは、人情の香りがする老舗。まだ早いうちから手をかけた扉は法善寺横丁にある?洋酒の店 路?。母から息子へ、そして先代の甥にあたる現店主の松浦雅則さんと、三代で看板を守ってきたバーである。名を継ぐ歌舞伎役者と、店という空間を継ぐ酒場主人が向かい合えば話は深くなる。「僕からすれば形があるものを守るほうが大変だと思う」と先代時代から通う鴈治郎さん、銅マグで飲むジントニックを喉に流し、変わらぬおいしさに破顔一笑。 足元がふわり軽くなったところで水掛不動に立ち寄ってみよう。もっさりと苔むすお不動さんに、古く昔から上方芸人や商売人が参拝してきた姿を心にスケッチする。休業日の[玲優樹]ご主人と遭遇、直々に話をしていただき後日取材(P15)。普段は取材お断りだが「お世話になってる鴈治郎さんなら」と快諾くださる店が多かった。街は人だ。上方の芸人や文化人がこのカウンターで相好を崩す写真が壁に飾られ、おや、父上の坂田藤十郎氏もおられます(お隣は稲尾和久氏)。25年前の三代目鴈治郎襲名の夜だという。「やっぱり大阪は粋(いき)じゃなく粋(すい)やね」洋酒の店 路みちmap P15 「うちは店についてくれてはるお客さんが多いので、僕が店の空気を変えてはその方たちを裏切ることになりますから」と、信念を語る三代目。テレビが置かれ、くだけたマスターとの会話が弾むフランクなバーだが、カウンターには「この空気感、うちの店を守るため」、形式上「RESERVED」(予約席)の札が置かれている。昭和32年の創業。ジントニック1,000円、チャーム付きチャージ500円(各税込)。●大阪市中央区道頓堀1-7-10 バイストリート横丁ビル 206-6211-0928 17:00~24:00 日・祝休