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概要

osaka_bon_2015

Read the Osaka!周囲を雑木林に囲まれた司馬の自宅。生前のままになった書斎を見ることができる。廊下から階段の踊り場にまで蔵書があふれる家だった。 司馬?太郎は〝マンモスアパート?と呼ばれた、大阪・西長堀にある日本初の公団住宅から作家生活をはじめた。ところが、執筆のための資料が大量に増え続けたため、東大阪へと引っ越したという。いまの記念館が建っているのは、司馬が東大阪で暮らした2軒目の住まいと隣接地である。 「司馬?太郎は、白砂青松の地より都市のざわめきを好みました。喫茶店や映画館といった、都市の機能性がよかったんでしょうね。このあたりは、実に大阪らしい庶民的な町なので、司馬が近所を散歩していても、まず声をかける人もいなかったそうです。ベストセラー作家だからといって分け隔てなく接する大阪人らしい感覚ですね。だけど、没後に記念館ができると、〝司馬さんと喫茶店でよく会いました?とか、たくさんの声が集まってきた。作家にとってはとても居心地のいい町だったんでしょう」 司馬が特別に大阪にこだわっていたわけではない。 「もとは新聞記者でしたから、大阪の町をよくしたいという思いは当然あったろうと思います。経済優先ではなく、地域文化をより成熟させるためには、ひとりひとりが意識を持たなければいけない。その答えを探すためにも、歴史上の人物に焦点を当てて、彼らはどう考え、行動してきたのか、司馬は作品を通して考え続け、その中で大阪をとらえていたように思います」 アジアの中に日本を位置づけるような大きな視野と、地元・大阪での生活意識に根ざした下からの目線。それを膨大な歴史資料に照らし合わせながら、徹底的に考え尽くした司馬の作品からは、今もその問いかけが響く。学問をそだてるには、土地に自由さがなければならない。そこへゆくと大坂の町は西洋風の自由というものはないにしても、町人一階級の町だけに封建のせせこましさが日本の他の土地よりもよりすくない。?『花神』日本六十余州に封建的美意識がゆきわたっているのに、この極端にいえば「町人共和国」ではそういうものがからっきしない。?『俄―浪華遊侠伝―』一望の田園は膏あぶらみ肉のようにゆたかであり、野は茅ち渟ぬノ海をかこんで瀬戸内海に通じ、淀よど川がわはかれの当時百万人を養うに足るといわれ、さらには秀吉がつくったその市街は、天下の富をあつめている。 ?『城塞』 この町は、商いの土地である。この時代、諸国の中流以下の庶人の家にうまれた者が、人がましくなろうと思えば大坂へ出て天てん秤びん棒ぼうをかつぐか丁稚奉公をして商いの道をおぼえ、刻苦精励のすえ頭をもたげる以外に手がない。?『俄―浪華遊侠伝―』司馬?太郎記念館[河内小阪] map P63 D-4 安藤忠雄設計のシャープな記念館。大書架を中心にして、およそ6万冊の蔵書があったという司馬?太郎の精神と執筆スタイルを身近に感じることができる。入館料500円。●東大阪市下小阪3-11-18 206-6726-3860 10:00~17:00 月曜休(祝日の場合は翌日休)&特別資料整理期間2015年8/31~9/10休司馬?太郎の本に見る大阪。上村洋行館長に聞く、司馬?太郎と大阪。『俄―浪華遊侠伝― 上・下』(講談社文庫)…幕末から明治にかけて、大坂の町で名をあげた侠客、明石屋万吉が主役。当時の大坂描写もこまかい/『おれは権現』(講談社文庫)…道頓堀に名を残す、安井道頓をスケッチした短篇『けろりの道頓』を収録/『軍師二人』(講談社文庫)…夏の陣での真田幸村、後藤又兵衛の葛藤を描いた表題作をはじめ、関ヶ原前夜の大坂を舞台にした短篇も/『大坂侍』(講談社文庫)…上方落語のような軽妙な語り口で、大坂人の気風を描き出す短篇集/『城塞 上・中・下』(新潮文庫)…大坂城を主題に、豊臣家滅亡へといたる運命に迫る/『花神 上・中・下』(新潮文庫)…若き大村益次郎が大坂・適塾に学ぶ導入部に、適塾での暮らしが鮮やかによみがえる101