ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

new_sakababon

(右上)「僕はソウル、李くんはジャズギターが好きとかカッコつけたことゆうてるけど、ふたりとも実はチェッカーズが好きやねん」と笑う雄一郎さん。(中下)常連がリクエストしたシングル盤も収納するジュークボックス。(左下)「来るたびに居心地の良さが増す」壁にもたれる李さん。 松竹座の真向かいの路地奥で、44年前から明かりを灯す。2代目店主・外賀雄一郎さんのソウルミュージックに対する造詣の深さにも酔いしれる。チャージ500円、ショット700円~(全て税込)。全10席・カード可。●大阪市中央区道頓堀1-10-15 206-6211-9802 8:00PM~3:00AM 不定休[A769 kitchen]店主兼バーテンダー。今年42歳とは思えないシュッとしたルックスにトロける女性ファンも多いが、親にも言えない悩みを打ち明けてしまうマジカルな包容力に、男性客もメロメロ。洋酒バー 石ノ花[ 大阪・道頓堀]李昌浩さん同い年の勇姿に唇噛めたから、バーテンダーでここまで来れた。飲む酒が一番美味しくて、10オンスだと氷が溶けて最後薄なるねんなぁ」と右手のグラスを懐かしむように見回わせば、「僕ら酒飲みは20分で一杯飲むのが当たり前やったから、これがちょうど良かってん」と雄一郎さんも嬉しそうに頷く。 道頓堀川を向いた?石ノ花?の窓が開いていると、そこから風とともにミナミの匂いがウワンと入ってくる。それを嗅ぎながら酒を飲むのがまた気持ち良い。「こういう濃い酒場に行ってたから、どんな場面もこなせたんちゃうかな。困ったときの笑顔も雄一郎から盗んだしね」。 再会の夜から4年後、李さんは前店?アナログ?をオープンした。路地奥の立地、席数を絞ったカウンターと、?石ノ花?へのオマージュが詰め込まれたバーは、風呂上がりのオヤジからピンヒール鳴らすギャルまでが肩を並べる超パブリックな空間へと成熟。約13 年間、濃いメンツに朝までガブり寄られながら、絶妙にいなすバーテンダーの姿がそこにはあった。 李さんが4年前にオープンした南船場のダイニング?A769kitchen?。東大阪・布施の盛り場だった前店のショットバーから空間を4倍に広げた大バコながら、李さんを慕うひとり客がカウンターに滑り込む光景をよく目にする。心地良いカウンターでの距離感。どんなキャパであろうとそれを大切にしているのは、道頓堀の?洋酒バー 石ノ花?での原体験が大きかったという。 元々、店主の雄一郎さんとは19歳の頃からの知り合い。その後、李さんは三重の大学を出て、名古屋の会社に就職。次に再会したのが、バーテンダーを志して戻ってきた24歳の時、友達に連れられて来たこの店だった。 当時の?石ノ花?といえば、松竹座の公演終わりにやって来る歌舞伎役者やミナミを根城にする遊び慣れた街人たちがカウンターを埋めていた時代。「(常連客に)俺は全然相手にされへん感じやったけど、雄一郎はベテランのお客と対等に、難しい音楽の話とかしてた…」。名店の看板を背負う同い年の姿を目の当たりにし、「一歩先を行かれてる」という焦りや嫉妬、そして、それ以上に相手の気分に合わせられるバーテンダーとしての懐の深さに憧れを抱いたという。「何でもいいから盗んで帰ろ」。そう心に決め、仕事終わりに寄り続けた。 「この8オンスのうすはり(グラス)もパクらしてもらった。これで人生を狂わせた店。取材・文/福山嵩朗 写真/バンリ酒場総集編3李昌浩さん洋酒バー 石ノ花56