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概要

M1506

にいるし」あそこも、あそこもと、近くの友達がやっている酒場をあげる。〝大正で生まれた男やさかい?か、いいねえ。〝大正ローカル主義?〝大正中心主義?という言葉が、おれの頭の中でチカチカした。悪い意味ではない、グローバルな根なし草の時代に、うらやましいのだ。 カウンターは、たちまち埋まる。時間帯によるのか、スーツ姿は少ない。労働のあとの好きで大事な一杯を、どこでどう飲むべきかを心得ている男たちばかりだ。その雰囲気もあって、魚も酒も一層うまい。早くも酔いがまわりそう。アブナイ、2軒目へ行こう。?ゆうだん丸?の横から裏手すぐ。駅近くだが住宅と商店が混在する一角だ。?畑分店?は古い渋い大きな家。暖簾をくぐれば、年季の入った大衆酒場。広い店内の入口左側にL字カウンター、右はテーブル席。しかもテーブル席はダークスーツで埋まり、L字の長い列はラフな服装の高齢社会。おれも72歳で作業着だから、その端に加えさせてもらう。 隣のご老人、84歳。驚いた、おれなんて若造じゃないか。背筋は伸び声も若い。大将を指差し、その手を腰の高さに「これ目の前の燗鍋とおでん鍋を見れば頼まずにいられない。それに差し出すお姉さんの笑顔が見たくて、もう一杯、もう一品と。おでん1コ120円、酒380円。なんでもつくるよ~の大将が作る玉子焼き450円。1943年新潟県生まれ、さいたま市在住。「大衆食堂の詩人」「酒呑み妖怪」といわれるフリーライター。著書に『大衆食堂パラダイス!』『大衆めし 激動の戦後史』ほか、雑誌や新聞に多数執筆。ちなみに若い頃、大阪で1年暮らしたそうだ。エンテツこと遠藤哲夫さて、次はどこにしようか…いっぱい食べてってね~次は何飲もか~二軒目 畑分店37