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概要

M1503

二月十九日と水餃子。取材・文/吉田志帆 写真/伊藤菜々子 香西ジュン 日本の正月は終わったが、中国ではこれからが本番。今年は2月19日が正月を表す春節(チュンジエ)にあたる。春節になると皆地元に帰り、家族で過ごすのが習わしだ。そして、今も昔も家族団欒の中心には“水餃子”が欠かせない。 それにしても大阪中華の代表が、なぜ水餃子なのか。ルーツはかつて西区川口に居留地が存在した1800年代後半にまで遡る。開港により広東省出身者が多く流入した神戸に対し、大阪は山東省出身の料理人が主流だった。山東料理とは北京料理のルーツ。大阪の老舗で北京料理を掲げる店が多いのには、ここに理由がある。そして山東省を含む北部地方は麺(小麦)料理の本場。なかでも貨幣の形に似ている水餃子は「財を成す縁起のいい食べ物」として宴席で好まれてきた。 大晦日から家族総出で作り、春節の朝に家族揃って食べる。家庭では餡の中に硬貨や、子宝を意味するナツメを入れ、新しい年の運試しをするのだそうだ。日本のお雑煮がそうであるように、親から子に受け継がれる水餃子も、作り手によって使う材料や味が微妙に異なるのも興味深いところだ。水餃子は我が一族の味。と同時に遠く山東省から大阪にやってきた、華僑の歴史そのものでもあるのだ。大阪中華の祖、山東省出身者が守り継ぐ伝統料理。34