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概要

ginza_west

011 第一章 喫茶室の風景かがみこんでケーキを熱心に選んでいるその後ろ姿は、銀座の風物詩のひとつといっていいだろう。 その売店に向かって左、階段が3段、それを上がったところに、喫茶室のドアがある。 ドアは木製で、ガラス窓が付いている。窓の内側に薄いカーテンがかかっているため、店の中はここからはまだ、はっきりとは見えない。ガラスにはウエストの店名と、指揮棒を持った少年の後ろ姿のシルエットが金色であしらわれている。この少年は名前を「フリッツ君」といって、創業当時からずうっと、ウエストのトレードマークという役を務めている。名前はお客さんが付けたそうだ。 ドアを開けよう。 テーブルと椅子が整然と並んでいる。昔ながら、といえる小ぶりなサイズだ。テーブルにかけられたクロス、椅子の背に付けられたヘッドカバー、どちらもまぶしすぎるくらいに白い。生真面目な色だ、という印象を受けるのは、それをいつも真っ白に保つためには相当にきちんと手入れをしなければならないからだ。