ブックタイトルsakaba_okikunatta

概要

sakaba_okikunatta

099 居酒屋案内人と飲みに行く〈大沢在昌〉太田　どうしようかな、えーと…。まずは、りゅうきゅうだな。大沢　りゅうきゅう?太田　関アジ、関サバの刺身をゴマ醤油だれにつけて…。りゅうきゅうを人数分下さい。関アジ、関サバは半々で。女将　はぁーい。あと先生ね、今日、四万十川で獲れた川エビを揚げてますから、お持ちしましょう。太田　それと、例のさつま揚げがほしいな。おもしろいもの入れて。大沢　おもしろいもの?太田　あそこの品書きにほうれん草、ネギ、ししとう…なんていろいろ書いてある。あれがぜんぶ、さつま揚げで食べられる。大沢　ほおー…。太田　「にんにくでやってくれ」とか「エビで」「かぼちゃで」。ラッキョウなんて、よかったなぁ。女将　じゃあ、盛り合わせで持ってきましょうか?太田　そしたら、ふた皿ね。大沢　（品書きを見ながら）「やせうま」って何?女将　手で延ばしたおだんごにきな粉と砂糖をまぶして。大沢　デザート系ですか?女将　そんな洒落たものじゃないですけれど（笑）。太田　じゃがいも土佐、ちりめんじゃこおろし。あとは様子を見ながら。じゃ、とりあえず…。大沢　ビールで。太田　乾杯。ファンレターの復讐!?返事の中には…。大沢　…大ファンです（笑）。太田　大作家にそんなこと言われたら、ちっちゃくなっちゃう…。大沢　あの、以前、お手紙をお出ししたことがあるんですけど…。太田　ええ、ええ、いただきました。大沢　太田さんがBSでやってらした『ニッポン居酒屋紀行』という番組。僕は、あの番組を初めて観たときから、すっかり太田和彦のファンになっちゃって。太田　身の縮む思いです。大沢　柔らかな物腰。明らかにグルメのタレントさんとは違う、ちょっと口ごもるような朴訥な口調。でも、ハッキリものをおっしゃる。何よりカウンターでお酒を飲んでいるときの、あのおいしそうな顔…。太田　それしか取り柄がない。大沢　太田さんって、紳士で柔和な印象を持っていたんですけど、その、僕のファンレターのお返事に…。太田　ええ。大沢　「寸志」と書かれた「拳銃の写真」が同封されてて…（笑）。太田　あはははは、そうだった。ちょっとした冗談のつもりです。