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概要

kyoto_chuka

「京都の中華」は、ちょっと違う。中華というもののとらえ方と育ち方が、ほかの街とはちょっと違う。花街の習慣「ごはんたべ」にもたえる、店のしつらいと、気働き。? 飛ひ雲うん?? 第だい一いち樓ろう?? 鳳ほう舞まい?のお弟子さんたちに受け継がれる、独特のだしのとり方。その一方で、反動のように愛されてきた、味濃く、ボリューム満点の学生街の中華。しかもみな「安い」という月並みな言い方が申し訳ないほど、勘定がやさしい。街の歴史や風習に合わせて、地殻変動のように変化してきた「京都でしか成り立たない味」。この味を「おいしさ」とする味覚は、いったいどこからやってきたのか。それを知るため、本書では、まず京都に育った私が個人的に好きな京都の中華料理店を訪ね、「どのように今の味に落ち着いたのか」をお聞きすることから始めた。同時に、「京都と中華のなれそめ」についても調べ、「ここで歴史が動いたな」と感じた出来事を時代別コラムにして、巻末にまとめてみた。また、本書で「京都の中華」のひとつの系譜をつくった中国人・高こう華か吉きちさんの足跡を、彼を知る人々の協力のもとにまとめられたことは、大きな喜びである。街と味は、合わせ鏡のようだ。街が味を育て、味が人を呼び、店を呼んで、また新しい街をかたちづくる。街が消えても、店がなくなっても、あの味が食べたい、と求める「味覚」は人々に残る。今回、取材を重ねる中で、「京都は中華が弱い」「変化にとぼしい」といった声を耳にした。おそらく「本場中国の現状とは距離がある」といった意味なのだろう。本場や本物を追求するのは、もちろん素晴らしいことだ。でも、あまりにそれを追い求めると、「正解の味」はたったひとつになってしまう。もう少し軽やかに、自分の街に縁あって生まれた味を知ろうとしたり、喜ぶことはできないか。あなたの住む街にも、「そこにしかない中華」「そこにしかない味」がきっとある。「京都の中華」が、あなたの街が育てたかけがえのない味に気づく、ひとつのきっかけになってくれればいいなと思う。